

本サイトの記事でも度々触れるSerato DjやTRAKTORですが、現在これらのソフトウエアは総称してPCDJと呼ばれており、その活用方法や一緒に使用するハードウエアはDjのスタイルによっても大きく異なります。
今回はそんなPCDJの基幹部分となるソフトウエアトップ3機種の機能を比較していきたいと思います。
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「PCDJソフトウエア」の変遷


出典:Musicians Friend
私がDjを始めたのが1999年でこの頃はまだまだアナログ全盛期の時代でした。そこから間もなくしてPioneerの名機であり初めて本格的なスクラッチが可能になったCDJとしてCDJ-1000が発売されました。 その後Dj機器ブランドから色々な機能をもったCDJが発売され2000年初期はハードウエアのリリースラッシュとなりました。 ハードが盛り上がりを見せる一方でPCDJソフトウエア業界は黎明期ではあったもののCDJ-1000のリリースとちょうど同じ頃にDj機器メーカーのStantonが世界初となるDVSソフトウエアFinal scratchをリリースしていました。


しかしこの頃はPCの相場も高く、DVSソフトウエアを起動できるだけのスペックを満たすPCはまだまだ高価であった上にOSはLinuxで起動するということもあり一般的なITリテラシーで導入するにはかなりハードルの高いものでした。そんな中PCDJソフトウエアにとって大きな転換期となる現在のSerato Djの前身、Scratch Liveが発売されジャンルやスタイルを問わずの多くのDjに広く使用されるようになりました。
その後、TRAKTOR scratchやMIX VIBES、VIRTUAL DJなどのPCDJソフトウエアもリリースされ、CDJの老舗メーカーであるPioneerからもrekordboxが発表され現在主流となっている3つのPCDJソフトウエアが出揃いました。
PCDJソフトウエア比較
今回比較するのは現在のPCDJ市場でトップ3のSerato Dj pro、TRAKTOR、rekordboxの3種類です。各ソフトウエアにそれぞれの特徴がありますが共通機能もあります。それらも含めて2019年7月21日現在の機能を下記の表にまとめてみました。
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Serato DJ pro | TRAKTOR pro3 | rekordbox | |
最新ver. | ver.2.2 | ver.3.2.0 | ver.5.6.0 |
DVS | 〇 | 〇 | 〇 |
デッキ数 | 2 or 4 | 2 or 4 | 2 or 4 |
CUE数 | 8 | 8 | Hot cue 16 Memory cue 10 |
Loop | 8 | 8 | 10 |
録音 | 〇 | 〇 | 〇 |
エフェクター | 1~3×2機 | 1~ 3×最大4機 | 1~3×2機 |
FX数 | 22 | 43 | 22 |
サンプラースロット数 (バンク) | 8 (4) × 1機 | 16 (4) × 最大4機 ※デッキと切替で 使用可 | 8 (4) × 2機 |
Midiマッピング | 〇 | 〇 | 〇 |
映像 コントロール | 〇(有料) | × | 〇(有料) |
Ableton Link | 〇 | 〇 | × |
ストリーミング サービス対応 | 〇 Sound cloud TIDAL | 〇 Sound cloud | 〇 Beat port Link |
スマホアプリ | 〇 (コントロール) | 〇 (Dj Mix) | 〇 (楽曲管理) |
独自機能 ※有料含む | Serato Flip TR-SYNC | Mixer FX Loop Recorder STEMS ステップシーケンサー | Sound color FX Release FX シーケンサー CDJ用エクスポート ライティング制御 |
有料オプション (プラグイン) | Serato FX Serato Flip Serato video Pitch’n Time DJ | × | rekordbox DVS rekordbox video rekordbox Lyric RMX EFFECTS |
オーディオI/O | RANE SL2 RANE SL3 RANESL4 DENON DS1 | TRAKTOR A6 TRAKTOR A10 | INTERFACE 2 |
代表的な対応Mixer | Rane 72 DJM-S9 | Kontrol Z2 | Pioneer DJMシリーズ |
ソフト起動 | △ 認定オーディオI/O以外× | 〇 任意のオーディオI/Oで可 | 〇 任意のオーディオI/Oで可 |
動作環境 | 【Mac】 10.12 10.13 10.14 【Win】 Windows 10 Windows 8.1 Windows 7 SP1 ※64bitのみ 【CPU】 Intel Core i3 Intel Core i5 Intel Core i7 1.07GHz以上 【RAM】 4GB以上 【HDD】 5GB以上の空き 【USB】 2.0サポート | 【Mac】 10.12 10.13 10.14 【Win】 Windows 7 Windows 8 Windows 10 ※1803以降64bit 【CPU】 Intel Core i5 【RAM】 4GB以上 【HDD】 1GB以上の空き 【USB】 2.0サポート | 【Mac】 10.12 10.13 10.14 ※最新 【Win】 Windows 10 Windows 8.1 Windows 7 ※最新SP 64bitのみ 【CPU】 Intel Core i3 Intel Core i5 Intel Core i7 【RAM】 4GB以上 【HDD】 2GB以上の空き |
価格 | ソフト単体購入16,200円 ※認定のハード所有の場合無料 | ソフト単体購入 12,800円 ※認定ハードにライセンス付属 | ソフト単体購入 16,200円 ※認定ハードにライセンス付属 |
比較してみた感想
現在、主流となっているSerato Dj pro、TRAKTOR pro3、rekordboxの3種を比較してみましたが、率直な感想としては基本性能であるDVSやCUEポイント、Loop、サンプラー等はどのソフトウエアも共通して網羅されていると感じました。また映像コントロールを除けば動作PCのスペックもほとんど同等です。
現在、機材やPC、PCDJソフトウエアの発展で2ターンテーブル1ミキサーの伝統的なスタイルに限らす様々なスタイルのDjがいます。ソフトウエアの選び方については色々なサイトでも解説されていますが、基本的にはプレイしたいと思うスタイルに適しているPCDJソフトウエアを選ぶのが一番良いのではないかと思います。
おススメのDjセットアップ
様々なサイトでも多くの解説がされているのでここでは私の主観で各ソフトウエアおススメのスタイルをまとめていきたいと思います。
Serato Dj pro
私も長きにわたってScratch Live、Serato Dj proを使用してきましたが、アナログターンテーブルを使用したDVSには一番おススメのソフトウエアだと思います。 動作の安定性や見やすいUI、操作や機能のシンプルさはトップであると同時に世界レベルのDj、トップクラスのBattle DJが使用していることからDVSの確かな追従性能も証明されています。


一方、昨今の認定ハードウエアのラインナップを見てみると一体型のMidiコントローラーのリリースが少なくなると同時に、RANEのSeventy-twoやTWELVEなど本格的なアナログフィーリングのハードウエアのスタイルにシフトしつつあるようにも思えます。
TRAKTOR Pro3
STEMSやRemix deck、Loop recorder、ステップシーケンサーなど独自の機能を多く持つTRAKTORはDVSやオフィシャルコントローラーKONTROL S4 mk3のようなコントローラーのスタイルにおススメだと思います。


独自の機能が多いためステレオタイプのDjスタイルよりもシステムを活用して新たなスタイルを模索したい方やDj mixをしながら曲を構築していくような実験的なスタイルのDjに向いていると思います。しかしその多機能さゆえにDj時にリアルタイムでコントロールためにオフィシャルでリリースされているコントローラーが必要になります(汎用コントローラーも使用可能ですが、Midiマッピングが必要)。メーカーであるNative instrumentsからは機能に応じたコントローラーがリリースされているので2ターンテーブル1ミキサーの基本的なDjセットへ必要に応じてコントローラーを追加していくようなことも可能です。
rekordbox
Serato Dj、TRAKTORと比べて比較的新しいソフトウエアであるrekordboxはPioneerのCDJやXDJを使用する方やコントローラーを使用する方におススメのソフトウエアだと思います。以前rekordboxをDVSで触らせてもらったことがあるのですが、スクラッチや2枚使いの際にコントロールバイナルにおけるCUEポイントのズレが大きく、気になりました。友人のものを触らせてもらったので設定の問題かもしれませんが、バトル系のDJがあまり使用していないことから見ても、やはりCDJ、XDJシリーズ、MIDIコントローラーに良いのではないかと思います。


その一方で上記の比較表を見てみてもわかる通りCUEポイントの数やエフェクト機能の充実、シーケンサーなど、基本機能に重きを置いているSerato Djの各種機能を強化し、新たなスタイルへと導くようなスペック構成となっているので今までにない新たなDjスタイルを模索したいという方の乗り換えソフトウエアとしてもおススメだと思います。
まとめ
今回、2019年7月現在、主流のPCDJソフトウエアを比較してみましたが、それぞれの特徴やスペック構成などが分かってスッキリ理解できました。
これからPCを使用したDJを始めるという方や、今までとは別のDJスタイルを模索したい、またはソフトウエアを乗り換えようと思っているといった方の参考になれば幸いです。
尚、PCDJソフトウエアの乗り換えについては以前の記事で紹介したRekord Buddyを使用することにより手軽にビートグリッドやキューポイントの移行ができるので記事をご一読いただくと良いかと思います。